肩痛・首痛とは
首や肩の痛み、凝りでお悩みの患者さまは多いと思います。
たとえば、首から肩にかけて慢性的に筋肉が張った感じがして、凝りがある、首を回しにくい、手にしびれやだるさがある、といったことです。
さらには四十肩や五十肩などと言われるように、肩が痛くて上がらないという場合もあるでしょう。
首で言うと、首(頚椎)は7つの頸骨から構成され前方に凸の湾曲をしています。
頚椎には、重さは約4〜6㎏とボーリングの球と同じくらいの重さがある頭部を支える、頭部を目的の方に向ける、神経組織を保護するなどの大切な機能があり、さらに手足を支配する神経が集まっている部分でもあるため、ここに障害が起こると全身に様々な症状が現れます。
また衝撃に弱かったり、姿勢の影響を受けやすかったりする部位でもあります。
たとえばストレートネックと呼ばれる首の湾曲が少ない方などでは、首の凝りなどの症状が起こりやすいと考えられています。
また肩で言うと、肩の関節は上腕骨と肩甲骨、そして胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節・肩峰下関節・肩甲胸郭関節 の5つの関節で構成されており、日常生活やスポーツなどで広範囲に動かせることが求められる部位で、自由度は大きくなっていますが、他の部位に比べて不安定な関節となっています。
その分、筋肉や靭帯などで支えられていますが、日常における姿勢の悪さ(頭部が前方へ移動した姿勢や猫背、巻き肩など)や、負担のかかり具合、また加齢などによって炎症を起こしたり、筋肉が硬くなったり弱くなったりすることで、痛んだり、動きが悪くなったりします。
こうした首や肩の症状は、単純にマッサージを施しても、その時は一時的に凝りが改善するかもしれませんが、時間が経つと元に戻ってしまいます。
重要なのは、日常生活で首や肩に持続的にかかっている負担を軽減することです。
当院では医師、理学療法士が患者さま一人一人の状況を丁寧に確認し、原因となっている部位の治療に加え、姿勢の改善を目指したリハビリテーションによって、お悩みの症状の改善、再発予防に取り組んでいきます。
肩痛・首痛の主な疾患について
四十肩・五十肩
五十肩あるいは四十肩などとして知られている中高年の方によくみられる肩の痛みは、医学的には肩関節周囲炎と呼ばれているものです。
中年以降に肩の関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化によって周囲の組織に炎症が起きて生じるものと考えられています。
また腱板断裂、上腕二頭筋の炎症など、様々な要因が引き起こす場合もあります。
四十肩・五十肩の症状
症状としては、腕を動かさなくてもズキズキと肩や腕が痛む、夜間寝ているときに寝返りをうって肩を下にすると痛みで目が覚めるといった安静時の痛みのほか、高い所にあるものが取れない、服を着たり脱いだりするのが辛い、背中のファスナーを閉められない、洗濯物が干せないなど、肩を動かすときの痛みや可動域の制限などの症状がみられます。
通常、発症した当初には強い痛みがありますが、しばらくすると痛みは落ち着いてきます。
しかし、肩の動きの制限は残ったままで、動かすと鈍い痛みが感じられます。そのまま痛いからと言って肩を動かさないでいると、肩の痛みはなくなっても、関節が癒着し動かなくなってしまいます。
ですので、早い段階からの治療やリハビリテーションが重要になります。
四十肩・五十肩の治療
治療としては、痛みが強い場合は、抗炎症薬や鎮痛薬の内服、湿布薬等を用います。
また炎症を抑えるためのステロイド剤や潤滑効果のあるヒアルロン酸の関節への注射を行う場合もあります。
さらに痛みが落ち着いた段階で、関節が固まってしまうことを防ぐためのリハビリテーションを行います。
ストレッチや温熱療法などの理学療法が有効です。
変形性頚椎症・頚椎椎間板ヘルニア
首(頚椎)に症状を引き起こす病気としては、変形性頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアなどがあります。
変形性頚椎症は主に加齢が原因となり、頚椎と頚椎の間のクッションの役割を果たす椎間板という組織がすり減って薄くなることで引き起こされるものであり、また頚椎椎間板ヘルニアは、その椎間板の一部がずれて飛び出してしまうことで起こる疾患です。
変形性頚椎症
変形性頚椎症では、椎間板がすり減ることにより骨がずれる、椎骨同士の衝撃が増えて骨が棘のように増殖する、脊柱管を支える靭帯が加齢によって肥厚することなどが原因となり、頚椎を通る脊髄神経を圧迫、主に肩から指先にかけての神経症状を引き起こします。
すると、首、肩、腕、手、指などに痛みやしびれが生じるなどします。
場合によっては、ボタンが上手くはめられない、箸が上手く使えない、字が書きづらい、歩くときに足がもつれる、階段では手すりが必要になるといった症状が現れることもあります。
頚椎椎間板ヘルニア
頚椎椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板の一部が、近くにある神経を圧迫することで様々な症状が現れます。
主に首の後ろや肩、腕に痛みやしびれが起こり、重症化すると手に力が入らなくなったり、細かい動作が上手くできなくなったりと運動機能に障害が生じ、手足の麻痺を引き起こすこともあります。
原因としてはスポーツやケガなどのほか、仕事などでよくない姿勢を取り続けることなどが挙げられます。
変形性頚椎症・頚椎椎間板ヘルニアの治療
これらの疾患の治療としては、首に負担がかからないよう安静にすることが重要で、カラーと呼ばれる装具を首に付け、痛みなどの症状に対しては、消炎鎮痛剤(NSAIDs)や神経障害性疼痛治療薬であるプレガバリン、神経の回復を促すビタミンB12製剤などによる薬物療法を行います。
併せて弱くなった筋力の回復や手足の機能の改善を図るためリハビリテーションを行うこともあります。
なお自分で無理に動かすと悪化する場合が在りますので、必ず医師や理学療法士の指示に従って行うようにします。